大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和31年(う)2368号 判決

被告人 恩河博通

〔抄 録〕

控訴趣意一、二について。

一件記録並びに証拠に徴し所論木村長吉、木村久子の各供述はこれを信用するに足り、その他原判決挙示の証拠によれば優に原判示事実を肯認することができ、所論の如く本件預り金につきこれを特別経費、運動費等に流用して差支ない旨の約定のあつた事実を認めるに由がなく、被告人の供述中、所論に副う部分は措信し難い。而して原審証人木村長吉、同木村久子の各証言、被告人の司法警察員並びに検察官に対する各供述録取書によれば、被告人は公認会計士兼税理士である実父の業務の手伝をなす傍ら、自ら他人の依頼により税金関係の帳簿の整理、書類の作成、税務署及び税務事務所に対する税金減額運動及び税金の納付等の事務を反覆継続して取り扱つて来たものでありその間原判示木村長吉から同様の事務取扱方を委託せられて原判示金員を預つたものであるから、これを刑法第二百五十三条にいわゆる「業務上」他人の物を占有したものと解するを妨げず、叙上の如くこれを不法に領得した事実が認められる以上、同条の罪(業務上横領罪)の成立あるを免れない。その他記録を精査するも原判決に所論の如き事実誤認ないしは法令適用の過誤はなく、被告人に原判示の如き金員保管の責務又はこれが不法領得の意思がなく、若しくは、被告人の所為が単純横領罪を構成するに過ぎないとの所論はこれを採用すべき限りではない。各論旨はいずれも理由がない。

(三宅 河原 遠藤)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!